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周期療法

「周期療法」とは西洋医学の月経周期のメカニズムと中医学(中国伝統医学)の考え方を合わせた優れた不妊症の治療法です。

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女性の月経のリズムを、大きく月経期、卵胞期、排卵期、黄体期、という4つの時期に分けて、それぞれの時期のからだの状態に合わせて、 漢方薬を飲み分けるという方法が基本になります。女性が本来持っている月経のリズムをコントロールする方法なので、からだに余計な負担をかけずによりよい 環境にからだを導くことができるのが、周期療法の優れたところです。
また、この方法は単に不妊治療だけに留まらず、女性のからだのリズムを整える方法として将来、健康な赤ちゃんを産むためや婦人病の予防、更年期を快適に乗りきるためにも役立ちます。

不妊症に関して、西洋医学は体外受精という画期的な方法を生み、遺伝子治療でさらなる発展を遂げようとしています。しかし、現実には、よい卵子と精子があ れば妊娠できるというわけではなく、着床ができないために、妊娠できないケースもよくあります。それは、母体のほうに準備が不十分であることに原因があり ます。漢方薬を使って、自身の弱い部分を補い、バランスを取ることにより本来備わっている妊娠する力、産む力を取り戻すことができるのです。

 

理想的な基礎体温とは

 

女性の月経には個人差がありますが、一般的には、27日~35日の周期で月経期、卵胞期、排卵期、黄体期の4つの時期を繰り返していきます。この中でまず大切なことは、

  1. 低温期と高温期に0.3度以上の差がある二相性か
  2. 低温期から高温期への移行がスムーズか
  3. 高温期が12~14日持続しているか

という点です。これらの条件が満たされていれば、理想的な基礎体温といえます。この他にも色々とチェックするポイントがありますが、基礎体温は、女性の体調やリズムを反映するので、正確に測ることにより、重要な情報源となります。

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基礎体温の正しいつけ方

 

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基礎体温とは充分な睡眠(6時間以上)の後に、安静のままで測った体温のことをいいます。測定時間はなるべく一定にし、朝の目覚めと同時に測ります。体を動かさずに、すぐに測定します。(先にトイレに行ったり、体を動かしてしまうと、正確な数値が計れなくなります)最低3周期以上は続けて測定しましょう。また体温表の備考欄にはできるだけ多くの情報を書くようにします(性交の日、不正出血、おりものの状態、月経痛や排卵痛、風邪やその他の症状、薬の服用状態など)

中医学からみた基礎体温と陰陽の関係は、排卵を中心に陰と陽が変化すると考えます。たとえば、低温期は陰の時期、高温期は陽の時期になります。低温期で排卵が近づくにしたがって陰が満ちて、その後排卵が起こり、陽に変化します。陰が充分満ちている時、排卵はスムーズで高温期へ移行します。低温期に陰が不十分な時、高温期も短くなり、悪影響を及ぼすことになります。

 

月経期

陽から陰に転換する時期で、体調の変化でわかるようにからだの中で激しい変化が起こっています。月経期には不要になった子宮内膜や月経血を完全に排泄させることが大切です。不要となった子宮内膜などが体内に残ると血のめぐりが悪くなるなど悪影響を及ぼします。いらなくなった子宮内膜や月経血を外にスムーズに排出させるために理気活血薬の冠元顆粒(かんげんかりゅう)、婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)、逍遙散(しょうようさん)、血府逐瘀丸(けっぷちくおがん)、帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)、などが用いられます。

 

卵胞期

月経後から排卵までの時期は、卵子の成熟をうながして、より良い卵子を作るため卵胞が発育していく時期です。陰が増える時期で卵胞を成長させるためには、陰と血を補う補陰養血という方法で補うことが大切です。これにより、より厚い子宮内膜が作られ、さらに受精卵が着床しやすい環境が整うのです。よく使われる漢方薬は杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)、参茸補血丸(さんじょうほけつがん)、婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)などです。

 

排卵期

陰から陽に転換する時期で、卵子が卵胞膜を破って飛び出します。排卵をスムーズにするため、気血も活発に動きます。この動きを助け、すばやく卵胞を黄体化させるために、気をめぐらせ、陽の働きを助ける助陽理気という方法と、血をめぐらせて排卵をうながす活血促排卵という方法が用いられます。また腎の機能を補う補腎薬も併用します。主な漢方薬は冠元顆粒(かんげんかりゅう)、血府逐瘀丸(けっぷちくおがん)などです。 

 

黄体期

排卵により抜け殻となった卵胞が黄体に変化し、子宮内膜が柔らかくなっていく時期です。黄体ホルモンの分泌により体温が上昇し、陽の時期になります。この黄体期は、受精卵を着床しやすくする準備期であるため、からだを温める補陽が中心になります。さらに着床した受精卵に充分な栄養を与えるため、補腎薬を使います。海馬補腎丸(かいまほじんがん)、参茸補血丸(さんじょうほけつがん)、瀉火補腎丸(しゃかほじんがん)、など使用します。また、この時期、イライラ、胸の張りや痛みなどの症状がある場合は疏肝理気という方法の併用が効果的です。逍遙散(しょうようさん)、開気丸(かいきがん)など使用します。

周期療法は、月経のリズムにあわせて薬を使い分けるのが原則ですが、「この時期にはこの漢方薬を使う」という決まった薬があるわけではありません。その人の体質や体調に合った薬を用いることが大切です。また、体質というものは一生変わらないものではなく、食事や生活環境、加齢などによっても変わっていきます。では、不妊症でお悩みの人に多い体質にはどのようなタイプがあるか分けてみると(陽気不足、血虚、気滞、瘀血、陰虚火旺、痰湿)などが多く見られます。

 

陽気不足タイプ(ようきぶそく)

 

体のエネルギーである気が不足し、体を温める機能が低下した状態。

 

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手足が冷えやすい、疲れやすい、元気がない、食べたくない、などの症状が出やすく、場合により流産の経験がある、月経時の色は薄い赤色で水っぽい、だらだらと出血が続く、月経前の不正出血なども見られることがある。また、基礎体温の特徴は体温が全体的に低い、高温期と低温期の差が小さい(0.3℃以内)、高温期の日数が短い(10日未満)などが見られる。冷えの原因には冷たい飲食物の取り過ぎ、薄着、冷房などの他に、ホルモンバランス、自律神経やストレスに関係するものが多くあります。特に下半身が冷えると子宮、卵巣など妊娠にかかわる大切なところへ影響が及びます。また冷えは骨盤の血液の流れや働きを悪くもします。子宝を望むなら、まず下半身を冷やさないことです。漢方薬では婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)がおすすめです。主成分の当帰は体をあたため、骨盤の血液の流れを改善すると共に女性ホルモンのバランスを整えてくれます。その他、参茸補血丸(さんじょうほけつがん)、参馬補腎丸(じんばほじんがん)なども効果的です。  

 

血虚タイプ(けっきょ)

 

体に栄養と潤いを与える血の量の不足や機能が低下した状態。

普段から血色がよくない、立ちくらみやめまいを起こしやすい、眠りが浅い、夢を見やすいなど不眠がち、疲れが残る、気分が落ち込みやすい、月経時には月経血の色が薄く、ピンク色の状態。また量も少なく、月経日数も少ない。月経後に疲れやすいなど見られる。基礎体温の特徴は低温期が長い、高温期が短い(10日未満)など。この場合も血を増やし妊娠しやすい体に整えてくれる当帰が多く含まれる婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)がよく使われます。当帰は不妊症改善の重要な漢方薬で、体力を高め貧血の改善はもちろん、特に女性ホルモンの働きを良くし、骨盤付近の血流を改善する作用に優れています。参茸補血丸(さんじょうほけつがん)、四物湯(しもつとう)、当帰補血湯(とうきほけつとう)、心脾顆粒(しんぴかりゅう)など効果的です。

 

 

気滞タイプ(きたい)

 

体のエネルギーである気のめぐりが悪くなった状態。

ストレスに弱い、情緒不安定、イライラしやすい、怒りぽい、ため息、気分が塞ぎやすい、月経前に胸やお腹の張り、肩こり、頭痛なども出やすい。基礎体温の特徴は体温の変動が激しい、低温期から高温期への移行に時間がかかるなど見られる。 月経時の周期は不安定で月経痛が酷い月とそうでない月がある。その他、高プロラクチン血症、乳汁の分泌が見られることがある。

ストレスを作らないことは不妊治療にとって大切なことです。しかし、世の中はストレス社会ですからまったくない人はそうはいないと思います。それならば、ストレスに負けない体を作り体調を整える方法を考える必要があります。 自律神経のバランスを整え、気の流れをスムーズにする逍遥丸(しょうようがん)という漢方薬がストレスを和らげるためによく使われます。また、疲労回復しながら抗ストレス作用の優れたシベリア人参(刺五加人参)も気持ちをリラックスさせ効果が早く現れます。

 

瘀血タイプ(おけつ)

 

血のめぐりや血液の質が悪くなり、粘り気を増してドロドロになったり、固まりやすくなった状態。

子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫や癒着などがある。瘀血(おけつ)の女性は妊娠しにくいと言われています。血液の流れが悪くなると月経痛がひどくなったり、月経血にレバー状の塊や粘膜のような塊が混じる。また月経血の色はどす黒い、赤黒い状態が見られる。月経中に頭痛や肩こりが起こるなど不調が多く見られる。基礎体温の特徴は月経が始まっても、体温がなかなか下がらない、また月経中、一度下がった体温が再び上がるなど現れることがある。
 

血液の流れが悪い状態、瘀血(おけつ)を改善する方法を活血化瘀(かっけつかお)といいます。この方法は不妊の原因となる子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫や癒着などが起こるのを防ぎ、さらに骨盤の血流を改善し、新鮮な血液が十分に卵巣や子宮に行き渡るようにします。これにより卵胞の発育もよくなり、妊娠しやすい環境が整います。漢方薬としては冠元顆粒(かんげんかりゅう)、血府逐瘀丸(けっぷちくおがん)などがあります。

 

痰湿タイプ(たんしつ)

 

体の中に、余分な水分がたまっている状態。

太っている人は痰湿を持つことが多くみられます。この痰湿は女性ホルモンに悪影響を与え、嚢胞やしこり、肥厚、卵巣嚢腫などの病変を引き起こす原因になります。中医学では多嚢胞卵巣症候群は痰湿による不妊、月経不順に相当します。月経時の状態は遅れがち、または無月経などよく見られ、月経血量は少ない、色は薄いなど。基礎体温の特徴は低温期が不安定、あるいは一相性である。漢方薬としては温胆湯(うんたんとう)、瀉火利湿顆粒(しゃかりしつかりゅう)、二陳湯(にちんとう)などがあります。
 

女性の体には、もともと「妊娠する力」「産む力」が備わっています。しかしながら、不妊症で悩んでいる人は増える傾向にあります。不妊治療をすれば半年から一年位で妊娠する人もいますが、長期間にわたり子宝に恵まれない場合もあります。不妊症の治療期間は、平均で4~5年と言われていますが、漢方治療をすることで比較的に早い段階で子宝に恵まれるケースが増えています。体のバランスを大切にし、予防と養生を兼ね備えた中国漢方で体にやさしく、安全な周期療法は、現在不妊で悩んでいる人におすすめします。お気軽にご相談ください。

ヤマト漢方薬局